PROACTIVEへの対抗
原産地といわれる雲南省では、四方に太い枝が伸びる力強い巨木だったのです。
「茶樹王」は残念ながら、一九九五年に落雷にあって枯れてしまいました。
しかし、「茶樹王」に匹敵する樹齢一〇〇〇年級の大木が、雲南にはまだ一〇〇〇本程度存在します。
ポリフェノールをはじめ、お茶には強力な薬効成分がありますが、そのパワーの源はこのような巨木の力強さに秘められているのかもしれません。
茶館では、烏龍茶などを洗茶(急須に入れた茶葉の上から熱湯を注ぎかけ、素早く湯通しして第一煎目を捨てること)するようにいうところもあります。
しかし、熱湯を注いだ時点でお茶の有効な成分が半分以上も流れ出てしまうので、私はお勧めしていません。
しかし、現代では、中国の生産現場も衛生には充分に気を使っていますから、洗う必要はないでしょう。
本場の中国でも、最近は洗茶をやめる傾向にあるようです。
「宵越しのお茶は飲むな」と言いますが、これは単なる言い伝えではなく、科学的な根拠があることです。
お茶にはたんぱく質が含まれていますが、これが実は腐敗しやすいのです。
カテキンは抗菌作用を持っているので、通常は腐るのを防いでいます。
しかし、カテキンが水に溶けて注がれるのに対し、たんぱく質は主に茶殻の中に残ります。
茶殻を急須の中に入れっぱなしにしておくと、中の温度が高いこともあって腐りやすくなるというわけです。
ただ、市販されているお茶はしっかり抗菌処理がなされていますから、短時間で腐るなどということはあまりありません。
中国には、お茶を冷やして飲むという習慣はありません。
ウーロン茶を冷たくして飲もうと考えたのは日本人なのです。
これは、イギリス人が紅茶を冷たくして飲んでいるのを真似したといわれ、極めて日本的な飲み方なのです。
日本と中国の食文化の差ともいえるのですが、日本人がうま味成分を重視するのに対し、中国人は香りを大変重視します。
香りも料理の一部だと考えているようです。
「日本茶と中国茶は同じ茶葉という素材を使った飲み物ですが、まったく違うものだ」と主張するお茶の愛好家もいます。
そう考えると、冷やして時間が経つと、中国茶は香りが死んでしまい、そのよさも半減してしまいます。
冷やすことによって科学的な成分が変わることは証明されていませんが、お湯で茶葉からいれ、すぐに飲むことをお勧めします。
ウーロン茶をはじめとして、中国緑茶、「ジャスミン茶」、「甜茶」などさまざまな種類の中国茶がコンビニエンスストアや自動販売機で売られています。
これらのお茶は、どちらかというと成分は薄いと思われ、血圧を下げるという目的で飲もうというのであれば、茶葉からいれたものを飲むことをお勧めします。
しかし、これは薬用という意味に限ってというだけの話で、喉が渇いたから何か飲もうというのであれば、健康飲料ですからどんどん飲んでください。
市販のペットボトルや缶入りでも、美味しいものはたくさん販売されています。
蛇足ですが、日本に影響されてというわけではないのでしょうが、中国でもペットボトルや缶入りのお茶飲料が増えているそうです。
しかも、人気は上々で、今後ますます増えていく傾向にあるそうです。
昔は、時間が経ったお茶、冷たいお茶は飲まないのが常識だった時代から考えると、中国もずいぶん変わったものです。
中国茶はなにしろ香りが命ですから、水道水でいれると、カルキ臭さがどうしても気になります。
使い終わったペットボトルなどに水道水をくみ置き、冷蔵庫に一晩入れておけば、臭いはかなり少なくなっています。
もちろん、ミネラルウォーターを毎回買っていれればそれに越したことはありません。
また、湯を沸かすときには、必ず沸騰させるようにします。
強火で沸騰させ、そのまま四〜五分わかし続けてください。
これで、水道水に含まれている塩素の成分を取り除くことができます。
中国茶は熱湯でいれるのが原則ですが、猫舌の人は一度沸かしたものを多少さましてから使うとよいでしょう。
こうすることによって、純粋な水の成分に近づけることができるのです。
Rが著した中国のお茶の教科書「茶経」の中に「品水」という項があり、水を選ぶことについて記述されています。
昔は、現在のように水を殺菌したり浄化する技術がなく、おいしいお茶を飲むために、当然水も重視されたのです。
では、どんな水がお茶には最適だとされているのでしょうか?水といっても水道水や沢水、湧き水、雨水などさまざまな種類があります。
これにどんなお茶を当てはめるかでまた、嗜好も違ってきますので、これが一番よいということは実は難しいものがあります。
お茶に適している水というと、クセがなく飲みやすいという点では「軟水」がよいでしょう。
中国茶は香りが命ですので、香りを逃がさずしっかり抽出できるという意味では、一番無難です。
あと、注意したいのは、外国産のミネラルウォーターには、カルシウムのにおいが強いものもあるということです。
これはいわゆる「硬水」で、お茶本来の風味が損なわれる可能性がありますので注意してください。
中国茶を飲むとき、「血圧を下げるためとはいえ、やはり一緒に何か食べたい」、そう思うこともあるでしょう。
中国といえば、点心というイメージがあります。
中国の茶館では鰻頭や月餅などを食べている姿をよく見かけます。
しかし、これらはカロリーが高く、高血圧の治療をしている人にはあまり向きません。
中国には、お菓子以外にもたくさんのお茶請けがあります。
カボチャの種や松の実、ドライフルーツ、イチジクの干したもの、ウメの実をウーロン茶に漬けたものなどバラエティーに富みます。
これらの中では日本では、ドライフルーツなどが手軽に入手できます。
アンズ、干しブドウ、プルーンなどには、ビタミンがたくさん含まれています。
味もよく、お茶が進むことも間違いなしです。
「茶経」によれば、お茶の起源は紀元前二七〇〇年ごろとされています。
そこでは、神農がお茶を発見したことになっています。
神農がお湯をわかしている時に、偶然葉っぱが鍋に入ってしまった。
それが、あまりにも香ばしかったのでこれは何だ、ということでお茶が発見されたというのです。
この話自体が本当かどうかは疑わしいのですが、薬草の一つとして飲まれ始めたことは本当でしょう。
お茶の飲み方については、三国時代(一二世紀)に記された「広雅」という書物で、初めて記されています。
それによれば「お茶で餅を作り、それを陶器に入れて湯を注ぎ、葱、生菱を加える。
これは酔い覚ましに効く」とされています。
このときもまだ、薬として飲まれていることがわかります。
その後、「茶経」の著者である陸羽の時代になって、薬だったお茶が一般の人々に飲まれるまでに普及しました。
このころになると、街にも茶館が生まれ、いたるところでお茶が飲まれるようになっていきました。
その後、宋の時代(一〇〜一三世紀)にも、さらにお茶の製法は変化していきました。
湯に浸した茶葉を乾かしてからすって粉にしたものを、器に入れてそれに湯を注ぐというやり方です。
禅僧の栄西がこの新しい飲み方である抹茶法を持ち帰り、日本ではこの抹茶での飲み方は今でも行われています。